精密な診査・診断/治療計画

「歯が痛いから治してほしい」
「銀歯が取れたからつけてほしい」
歯科医院へ来院される際、多くの方が具体的な症状やご要望をお持ちのことと思います。
しかし、私たちが最も大切にしているのは、
「なぜその症状が起きたのか?」
「今後、同じ問題が再発しないためにはどうすべきか?」
という根本原因の解明と、将来を見据えた計画です。
家を建てる時、まず地盤調査を徹底し、設計図を綿密に練るように、お口の健康もまた、正確な「診査・診断」なしには、永続的な健康を築くことはできません。
目先の治療だけで終わらせてしまうと、再発を繰り返し、大切な歯を失ってしまうリスクが高まります。
栃内歯科医院では、皆様の口腔内の現状だけでなく、将来起こりうるリスクまでを徹底的に「見える化」し、それに基づいた「最適な治療計画」をご提案しています。
単に「悪いところを治す」だけでなく、皆様の歯が一生涯、健康で機能し続けるためのとても重要な作業なのです。
「リスクを診断する」ことの重要性
「リスクを診断する」とは、単に虫歯や歯周病があるかどうかを確認するだけではありません。
それは、「将来、あなたの歯やお口の中に、どんなトラブルが、なぜ、どのくらいの確率で起こりうるのか」を、多角的な視点と科学的根拠に基づいて予測することです。
例えば、
今、目に見える虫歯は小さくても、唾液の性質から、将来大きな虫歯になりやすい体質かもしれない
歯周病の進行が速いのは、特定の生活習慣や、噛み合わせの問題が隠れているからかもしれない
一見問題なさそうな歯でも、実は見えない部分でヒビが入っており、将来割れるリスクがあるかもしれない
このような潜在的なリスクを事前に把握できれば、トラブルが大きくなる前に、あるいは発生する前に、適切な予防策や介入を行うことができます。
リスクを診断しないまま治療を進めることは、羅針盤を持たずに航海に出るようなもの。
当院では、皆様のお口の未来の健康を「手探り」で進めるのではなく、「確かな羅針盤」を持って、安全・確実に進めることをサポートいたします。
初回に必ず行う精密検査:お口の中を「見える化」する
栃内歯科医院では、初めてご来院いただく全ての患者様に、口腔内の状態を正確に把握し、将来のリスクを診断するために、以下に挙げる包括的な精密検査を必ず実施いたします。
皆様の口腔の「現状」と「潜在的なリスク」を「見える化」するための、当院の基本方針です。
デンタルレントゲン撮影(10枚法)

デンタルレントゲンは、歯1本1本の状態を詳細に把握するために不可欠な検査です。
当院では、通常よりも多い「10枚法」で撮影を行います。
一般的なデンタルレントゲンは数枚の撮影に留まることもありますが、10枚法では、お口全体を細かく分割して撮影することで、全ての歯の微細な変化や異常を、より高精度に捉えることができます。
これにより、見落としなく、個々の歯の状態を詳細に分析することが可能となります。
デンタルレントゲン撮影(10枚法)で解ること
歯の内部の虫歯
肉眼では確認できない、歯と歯の間の虫歯や、歯の内部に進行している虫歯を発見できます。
歯の根の先端の炎症(根尖病巣)
歯の神経の治療(根管治療)が必要かどうか、あるいはその治療後の状態を評価します。
歯周病による骨の吸収度合い
歯を支える骨(歯槽骨)がどのくらい失われているかを正確に把握し、歯周病の進行度を診断します。
過去の治療痕
以前行った治療の適合性や、詰め物・被せ物の下の状態を確認できます。
歯の根の形や本数
複雑な歯の根の形を把握し、適切な治療計画に役立てます。
口腔内写真撮影

口腔内写真撮影は、肉眼では捉えきれない口腔内の細部を記録し、患者様ご自身にもご自身の状態を客観的に見ていただくための重要なツールです。
患者様ご自身が、「ご自身の口腔の現状」を視覚的に理解するための最も分かりやすい資料となります。
治療計画の説明時や、メインテナンス時の変化の確認、また将来的な経過観察において、客観的な情報として非常に重要な役割を果たします。
口腔内写真で解ること
歯の色や形態、着色
治療前後の比較や、審美的な評価に役立ちます。
歯肉の状態
歯肉の色、腫れ、炎症の有無、歯肉退縮(歯ぐきの下がり)の程度を記録します。
虫歯の初期段階や治療痕
肉眼では気づきにくい初期の虫歯や、既存の詰め物・被せ物の劣化状態などを鮮明に確認できます。
舌や粘膜の状態
口内炎やその他の異常がないかを確認します。
唾液検査

唾液検査は、虫歯や歯周病に対する「あなたの体質」を科学的に評価するための検査です。
お口の健康は、日々のセルフケアだけでなく、唾液の質や口腔内の細菌バランスにも大きく左右されます。
「なぜ自分は虫歯になりやすいのか?」「どうすれば効果的に虫歯を予防できるのか?」といった、個々人の「体質」に基づいた予防策を立案するために非常に有効です。
ブラッシング指導や食生活指導など、よりパーソナルな予防プログラムを策定する上で、不可欠な情報を提供します。
唾液検査で解ること
虫歯菌の量(ミュータンス菌、ラクトバチラス菌など)
虫歯を引き起こす主な細菌の数を測定し、虫歯のリスクレベルを評価します。
唾液の緩衝能(酸を中和する力)
食事によって酸性に傾いた口腔内を、唾液がどのくらいの速さで中性に戻せるかを調べます。
この力が弱いと、虫歯になりやすい傾向があります。
唾液の分泌量
唾液の量が少ないと、自浄作用や再石灰化作用が働きにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
歯周病菌のリスク(一部の検査キット)
特定の歯周病菌の種類や量を推測できる場合もあります。
歯周ポケット検査(6点法)

歯周ポケット検査は、歯周病の進行度と歯を支える骨の状態を詳細に評価するための最も基本的な検査です。
歯の周囲を細かく6点で測定することで、歯周ポケットの状態をより詳細に把握できます。
歯周病の進行部位や活動性をピンポイントで特定し、最適な治療計画やメインテナンス計画を立案することが可能になります。
また、デンタルレントゲンで確認した骨の吸収度合いと歯周ポケットの深さを合わせて診断することで、歯周病の全体像をより正確に把握できます。
歯周ポケット検査(6点法)で解ること
歯周ポケットの深さ
歯と歯ぐきの間の溝の深さを測定し、歯周病の有無や進行度を診断します。深さが深いほど、歯周病が進行している可能性が高いです。
出血の有無(BOP: Bleeding On Probing)
歯周ポケットを測定した際に出血があるかどうかを確認します。出血は歯ぐきに炎症が起きているサインです。
歯の動揺度
歯がグラグラしていないか、その度合いを評価します。
パノラマレントゲン検査

パノラマレントゲンは、お口全体の状態を一枚の画像で広範囲に把握するための検査です。
全体像を把握することで、個々の歯だけでなく、口腔全体としてどのように治療を進めるべきかという大局的な治療計画を立てる上で不可欠です。
デンタルレントゲンと組み合わせることで、より詳細かつ広範囲な診断が可能になります。
パノラマレントゲンで解ること
お口全体の状態概観
上下の顎、歯の全体、顎関節、鼻腔の一部などを一度に確認できます。
親知らずの位置や状態
埋伏している親知らずの有無や、将来的に問題を起こす可能性を評価します。
隠れた病変
顎の骨の中に存在する嚢胞(のうほう)や腫瘍、その他の異常を発見する手がかりとなります。
顎関節の状態
顎関節症の診断に役立つ情報を提供します。
上顎洞(鼻の横の空洞)の状態
歯の炎症が上顎洞に波及していないかなどを確認します。
必要に応じて行う精密検査:より複雑なケースに対応するための詳細診断
上記の初回検査に加え、患者様の口腔内の状態や抱える問題に応じて、さらに詳細な情報を得るために、以下の精密検査を実施することがあります。
より複雑な症例や、特定の治療を行う際に、「見えない部分」まで正確に把握し、治療の成功率を高めるために不可欠です。
CT検査
CT(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)は、口腔内の状態を「三次元(3D)」で詳細に分析するための画像診断です。
通常のレントゲンでは二次元の画像しか得られないため、骨の厚みや奥行き、神経や血管の位置関係などを正確に把握することは困難です。
CT検査は、この限界を克服し、より複雑な症例において圧倒的な情報量を提供します。
CT検査で解ること
骨の量と質
インプラント治療を行う際に、骨の厚みや密度を正確に評価し、最適なインプラントの埋入位置やサイズを決定します。
神経や血管の走行
親知らずの抜歯やインプラント治療など、外科処置を行う際に、神経や血管の正確な位置を把握し、損傷リスクを回避します。
歯の根の形態や病変
複雑な根管の形状や、通常のレントゲンでは見つけにくい根の先の炎症(根尖病巣)を立体的に確認できます。
嚢胞や腫瘍の正確な位置・大きさ
顎の骨の中に存在する病変の範囲を詳細に把握し、治療計画を立てます。
CT検査が必要となるケース
インプラント治療
最も頻繁に用いられるケースです。安全かつ成功率の高いインプラント治療のために不可欠です。
難易度の高い親知らずの抜歯
神経や血管に近い親知らずの抜歯計画に役立ちます。
根管治療の再治療
複雑な根管形態や、以前の治療で取り残された感染源の特定に役立ちます。
嚢胞や腫瘍などの病変診断
病変の正確な範囲を把握し、手術計画を立てます。
歯周外科治療
骨の再生療法など、より高度な歯周外科治療の際に、骨の状態を正確に評価します。
術前精密顎位診査(噛み合わせの精密検査)
精密顎位診査は、特に複雑な補綴治療(詰め物や被せ物、義歯など)を行う方、複数の歯を失っている方、または噛み合わせに問題がある方に対して、「理想的な噛み合わせの位置」を正確に特定するために実施します。
噛み合わせは、口腔全体の健康だけでなく、全身のバランスにも影響を与える重要な要素です。
この検査を行うことで、長期的に安定し、快適な噛み合わせを回復させるための基盤を築きます。
治療後の再発リスクを最小限に抑え、快適な食生活を長く続けていただくことが可能になります。
精密顎位診査で解ること
顎関節の機能と位置関係
顎の関節がどのように動き、現在の噛み合わせが顎関節にどのような影響を与えているかを詳細に分析します。
筋肉のバランス
顎を動かす筋肉の過度な緊張や、バランスの崩れを評価します。
理想的な顎の位置(顎位)
歯や顎関節、筋肉に負担の少ない、患者様にとって最も安定した噛み合わせの位置を特定します。
補綴物の設計指針
特定された理想的な顎位に基づき、詰め物や被せ物、義歯などを設計し、長期的な安定性と機能性を確保します。
精密顎位診査が必要となるケース
広範囲な補綴治療
複数の歯をまとめて治療する場合や、ブリッジ、インプラント上部構造、総義歯などを製作する場合。
噛み合わせの不調和
顎関節症の症状がある、特定の歯にばかり負担がかかる、原因不明の頭痛や肩こりがある場合。
欠損歯が複数ある場合
失われた歯を補う際に、全体の噛み合わせのバランスを再構築する必要がある場合。
セファロ分析(頭部X線規格写真分析)
セファロ分析は、頭部全体のX線写真を撮影し、骨格のバランスや歯の位置、顎の成長方向などを数値的に分析する検査です。
特に矯正歯科治療において重要な診断情報となります。
歯並びの問題は、歯そのものだけでなく、顎の骨格的なバランスに起因していることが少なくありません。
セファロ分析を行うことで、歯並びの根本原因を正確に把握し、より効果的で、後戻りの少ない治療計画を立てることができます。
顔貌全体との調和も考慮した、審美性と機能性を両立する治療を目指します。
セファロ分析で解ること
上下の顎骨の大きさや位置関係
顎の骨が前方に出ているか、後方に引っ込んでいるかなど、骨格的な特徴を把握します。
歯の傾きや位置
前歯の傾きや突出度、奥歯の位置などを数値で評価します。
顎の成長パターン
将来の顎の成長方向を予測し、治療計画に反映させます(特に成長期のお子様の場合)。
顔のプロファイル(横顔のバランス)
矯正治療が顔貌に与える影響を予測し、より審美的な改善を目指します。
セファロ分析が必要となるケース
矯正歯科治療
歯並びだけでなく、骨格的な問題が関連している不正咬合の診断や治療計画立案に不可欠です。
顎変形症の診断
顎の骨の大きなズレがある場合に、外科的矯正治療の必要性を判断します。
成長期のお子様の顎の成長予測
適切な時期に矯正治療を開始するための重要な情報となります。
精密な診査・診断から導かれる「治療計画」

これらの多角的な精密検査によって得られた詳細なデータは、決して単なる数値や画像として終わることはありません。
これらの情報を総合的に分析し、患者様一人ひとりの口腔の「現状」と「将来起こりうるリスク」を正確に把握した上で、最適な「治療計画」を立案します。
虫歯、歯周病、噛み合わせ、審美性など、口腔内のあらゆる要素を総合的に考慮し、部分的な治療にとどまらない、口腔全体としての健康と機能の回復を目指します。
栃内歯科医院は、盛岡の皆様に、「根拠に基づいた安心」と「未来を見据えた質の高い歯科医療」を提供することをお約束いたします。