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ワイヤー矯正とマウスピース矯正、痛みが少ないのはどっち?実際の痛みの強さ・期間・対処法を専門的視点から徹底比較

   

矯正治療を検討する際、多くの方が「治療期間」や「費用」と並んで最も不安に感じるのが「痛み」です。
「歯を動かすのだから痛いのは当たり前」と分かっていても、どの程度の痛みがどのくらい続くのか、装置によって違いがあるのかは非常に気になるところでしょう。

結論から申し上げますと、一般的にはワイヤー矯正よりもマウスピース矯正の方が、痛みや違和感が少ない傾向にあります。
本記事では、なぜ矯正治療で痛みが生じるのかという根本的なメカニズムから、ワイヤー矯正とマウスピース矯正(主にインビザラインなどのアライナー型装置)の痛みの違い、痛みを最小限に抑えるための最新技術や対処法まで、詳細な解説をお届けします。

 

1. 矯正治療で痛みが出る仕組み:歯が動くメカニズム

そもそも、なぜ矯正装置をつけると歯が痛むのでしょうか。その理由は、歯を支えている骨(歯槽骨)の構造にあります。

 

歯周組織のリモデリング

歯と歯槽骨の間には、歯根膜(しこんまく)というクッションのような組織があり、歯は骨の中でトランポリン状に浮いています。矯正装置によって歯に力が加わると、歯根膜内の細胞が反応し、以下のプロセスが起こります。

1. 骨の吸収
歯が移動する方向の骨を、細胞(破骨細胞)が溶かします。

2. 骨の再生
移動した後の隙間に、細胞(骨芽細胞)が新しい骨を作ります。

この吸収と再生(リモデリング)を繰り返す過程で、歯周組織には一時的な炎症反応が生じます。
これが矯正治療に伴う痛みの正体です。

 

「至適矯正力」という考え方

歯を効率よく動かすためには、強すぎず弱すぎない「至適矯正力」が重要です。
一般的に、1歯あたり50〜100g程度の弱く持続的な力が最適とされています。
これを超える過大な力が加わると、歯根膜の血流が阻害され、貧血状態や硝子様変性を引き起こし、かえって歯の移動が遅れたり、強い痛みが生じたりする原因となります。

 

2. ワイヤー矯正とマウスピース矯正:痛みの強さと性質の比較

ワイヤー矯正(マルチブラケット法)とマウスピース矯正(アライナー法)では、歯にかかる力の伝え方が根本的に異なります。

 

マウスピース矯正の痛みが少ない理由

マウスピース矯正が「痛みが少ない」とされる最大の理由は、一度にかかる力が微細であることにあります。

移動量のコントロール
マウスピース(アライナー)1枚で歯を動かす距離は、最大でも0.25mm(コピー用紙約2.5枚分)に設計されています。

力の分散
ワイヤー矯正は調整日に1ヶ月分(約1mm分)の力を一度にかけますが、マウスピース矯正は1週間ごとに装置を交換し、その1/4ずつの力で段階的に動かします。

素材の進化
最新のアライナー素材(SmartTrackなど)は柔軟性が高く、持続的かつ穏やかな力を加え続けることが可能です。

 

ワイヤー矯正特有の痛み

ワイヤー矯正の場合、以下の2つの痛みが組み合わさることが多いです。

1. 歯が動く痛み
調整直後に大きな力がかかるため、数日間は物を噛むのが辛いほどの痛みが出ることがあります。

2. 装置が当たる痛み
金属のブラケットやワイヤーが頬の粘膜や舌に擦れ、口内炎や潰瘍ができる物理的な刺激による痛みです。

一方、マウスピース矯正のアライナーは滑らかな合成樹脂製のため、粘膜への刺激が非常に少ないのが特徴です。

 

3. 痛みが続く「期間」の違い

痛みの感じ方には個人差がありますが、装置によって「痛みが出るタイミング」と「持続時間」には明確な傾向があります。

 

マウスピース矯正の場合

ピーク
新しいアライナーに交換してから半日後〜約24時間。

持続期間
多くの患者さんが1日程度で慣れると報告されています。

性質
締め付けられるような感覚や、じわじわとした鈍痛。

 

ワイヤー矯正の場合

ピーク
装置の調整後、当日夜〜翌日。

持続期間
通常3日間〜1週間程度続きます。

性質
歯が浮いたような感覚があり、上下の歯が接触するだけで激痛が走ることもあります。

 

生活・食事におけるストレスの差

「痛み」は単なる感覚だけでなく、食事という日常生活の質(QOL)に大きく影響します。

ワイヤー矯正の食事
装置を外せないため、硬いもの(フランスパン、肉類など)を噛む際に痛みを感じやすく、装置に食べ物が挟まる不快感もあります。

マウスピース矯正の食事
食事の際は装置を取り外せるため、食べること自体の制限はほとんどありません。
ただし、アタッチメント(歯の表面の突起)が付いている場合、それが粘膜に触れる感覚はありますが、痛みが出るほどではありません。

 

5. 痛みを軽減・加速させるための最新技術:PBMヒーリング

近年、矯正治療に伴う痛みの緩和と治療期間の短縮を同時に実現する「PBMヒーリング(光バイオモジュレーション療法)」が注目されています。

 

作用機序

低出力の赤色光や近赤外光を照射することで、細胞内のミトコンドリアを活性化させ、組織の修復と再生を刺激します。

除痛効果
局所的な炎症を軽減し、矯正装置装着後の不快感を和らげる効果が期待されています。

治療の加速
骨のリモデリングを促進するため、通常の約2倍の速さで歯が動くという研究データもあり、結果として「痛みに耐える期間」そのものを短縮できます。


このような補助療法を併用することで、痛みに敏感な方でも安心して治療を継続できる環境が整いつつあります。

 

6. 痛みを和らげるための具体的な対処法

どうしても痛みが辛いとき、自宅でできる対策をいくつか紹介します。

 

鎮痛剤の使用

痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤を使用しても構いません。
ただし、アセトアミノフェン(パラセタモール)系が推奨されます。イブプロフェンなどのNSAIDsは炎症を抑える力が強く、歯を動かすために必要な炎症反応まで止めてしまうため、治療効率を下げてしまう可能性があります。

 

アライナーの交換タイミングを工夫する

マウスピース矯正の場合、「就寝前」に新しいアライナーへ交換するのがコツです。
寝ている間に最初の数時間の大きな移動(と痛み)を済ませることで、翌朝には痛みのピークが落ち着き、装着時間も効率よく確保できます。

 

アライナーチューイーの活用

アライナーと歯の間に隙間があると、不適切な力がかかって痛みが出やすわれます。
「アライナーチューイー」をしっかり噛んで装置を密着させることで、計画通りの至適矯正力が伝わり、無駄な痛みやアンフィット(浮き)を防ぐことができます。

 

7. 注意が必要な「できないケース」と「トラブル」

痛みが少ないというメリットだけで安易にマウスピース矯正を選ぶのは危険です。
症例によってはワイヤー矯正が適している場合や、特有のトラブルが発生することもあります。

 

マウスピース矯正が不得意な動き

挺出(引き出す動き)
歯を骨から引っ張り出す動きは予測実現性が約30%と低く、無理に行うと装置が浮いて痛みの原因になります。

抜歯症例
抜歯を伴う大きな移動では、歯が近心に倒れ込む「ボーイングエフェクト」が起こりやすく、噛み合わせが崩れてしまうリスクがあります。

 

臼歯部開咬(自歯部離開)の発生

アライナーが咬合面を覆っているため、無意識に噛み締める癖(TCH)などがあると奥歯が骨に沈み込み(圧下)、前歯しか当たらない状態になることがあります。
これは「噛めない」という深刻なトラブルに繋がるため、早期の発見とリカバリーが必要です。

 

8. 失敗・後悔しないために:歯科衛生士の役割

マウスピース矯正は「患者依存型治療」です。歯科医師がどれほど優れた治療計画(クリンチェック)を立てても、患者さんが装着時間(1日20時間以上)を守らなければ成功しません。

私たち歯科衛生士は、患者さんのモチベーションを維持し、痛みの相談に乗る「伴走者」としての役割を担っています。


モニタリング
来院ごとにアタッチメントの脱離がないか、アンフィットがないかを確認します。

心理的サポート
変化を感じにくい時期でも、シミュレーション画像を用いて「今、この歯を動かしている最中ですよ」と伝えることで、患者さんの安心感に繋げます。

 

まとめ:自分に合った装置選びを

「ワイヤー矯正とマウスピース矯正、痛みが少ないのはどっち?」という問いへの答えは、「マウスピース矯正」です。
しかし、単に痛みの有無だけで決めるのではなく、以下のポイントを総合的に判断することが大切です。

目立ちにくさ・清掃性重視ならマウスピース矯正。

装着時間の管理に自信がない、または重度の抜歯症例ならワイヤー矯正。

痛みを最小限にしつつ早く終わらせたいならPBMなどの補助療法の検討。

矯正治療は、人生をより豊かに、自信を持って笑えるようにするための手段です。痛みへの不安はカウンセリングで遠慮なく相談し、納得できる治療方法を見つけていきましょう。

 

参考文献・出典:本記事は、アライナー矯正の基礎知識、矯正臨床 manual、および PBM 療法に関する学術資料等に基づき作成されています。

 



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